馬科学情報

Q&A

WEVA加入

 

Q:日本ウマ科学会のWEVA加入について

 

 WEVA(世界馬獣医師会)は1985年にWVA(世界獣医学協会)の一部門として設立されましたが、1997年にはWVAから独立し、2年ごとに世界馬獣医学会が開催されています。WEVAのホームページ上には加入メンバーが掲載されており、日本ウマ科学会のロゴマークも入っております。本学会がWEVAに加入するきっかけとなった理由や、手続きの時期、場所、担当者などを含む経緯について、少し詳しく教えてください。

 

A:お答え (受稿日:2015.11.16)   千田哲生 (元JSES常任理事、元JRA参与)

 

 WEVAは1985年5月に設立され、1987年の第23回世界獣医学大会(WVC)・カナダ大会期間中に第1回学術集会が動物種別分科会の一つとして開催されました。この学術集会ではWEVAの規約等を作成するとともに、第2回大会を2年後の1989年にドイツのエッセンで開催することが決定されました。私はこのドイツ大会に参加し、その後日本ウマ科学会のWEVA加盟に携わってきましたので、少し時代背景も含めて経緯を説明したいと思います。

 わが国では昭和40年代になってウマ産業が急速に衰退し、それまで獣医学の教育や研究の中枢であったウマが姿を消して行きました。他方、海外ではウマはスポーツやレジャーのための伴侶動物として益々発展の一途を辿っていきます。そのような現状に危機感を抱いた研究者や教育者が、東大名誉教授の沢崎担博士を中心に1988年頃からウマに関心を持つ人なら誰でも参加できる会を設立し、学術活動等を推進するとともに世界との連携を深めようという機運が高まってきました。

 そんな折、WEVAの事務局から、1989年にドイツのエッセンで開催される第2回大会への日本からの参加を要請してきました。当時、その受け皿となるべき日本ウマ科学会は未だ設立されておりませんでしたので、複数の団体や大学、研究所に呼びかけたそうですが、それに応じて代表を送ったのは日本中央競馬会だけでした。私はその代表として出張を命じられ、オブザーバーという資格で参加しました。

 1990年に日本ウマ科学会が発足して活動を始めましたが、その一環としてWEVAのメンバー団体になることを決定しました。そこで、1991年にブラジルのリオデジャネイロで開催されたWVCに併せて開催された第3回大会の総会及び役員会に、本好茂一会長と庶務担当の私が出席し、総会で日本ウマ科学会が日本を代表するWEVAのメンバーとして正式に承認されるとともに、私がアジア担当の役員に任命されました。私はその後、1993年にスイスのジュネーブで開催された第4回大会、1995年に横浜市で開催された第5回大会までアジア担当役員を務め、その後徳力幹彦先生に役職を引き継ぎました。

 

A:お答え (受稿日:2015.12.16)   徳力幹彦 (元JSES常任理事、山口大学名誉教授)

 

 1995年、横浜で開催されたWVAと共に開催されたWEVAにおいて、千田哲夫理事から以後の理事を依頼されて、1997年、The Societa Italiana de Ippologicaの主催により、イタリアのパドバで開催された6th WEVAでは、理事として参加しました。このとき、理事会においてWVAから独立してWEVAを開催することが検討されました。1999年、フランス馬獣医学会の招待により、フランス馬獣医学会大会と共にWEVAがパリで開催され、WEVA理事会において、今後、WEVAは完全に独立して、2年ごとに大会を開催するための会則を全員一致で決定しました。

 2001年、イタリアの馬獣医学会の主催により、7th WEVAがソレントで開催されました。このときの理事会で、馬の臨床では発展途上にある国々から講演を依頼されているが、どのように対処するかが検討され、2年ごとに開催されるWEVAの中間年に、「中間年講演会」を開催することが決定されました。従って、2003年の8th WEVAまでの間に、ロシアのモスクワ、ウクライナのキエフ、エルサルバドルのサンサルバドル、および中国の北京で、それぞれ、講演会が開催されることになりました。また、このような状況を考慮して、今後、WEVAは馬の臨床学がこれから発展していく国々で開催することも決定され、次回の開催国はアルゼンチンのベノスアイレスと決定されました。

 2003年、ベノスアイレスで開催された8th WEVAは、参加者も多く、大成功でした。この大会で私の理事の任期は終わったのですが、代わりがいないので引き続き理事を継続して欲しいと依頼され、2006年、モロッコのマラケシュで開催された9th WEVAまで、理事を続けました。私の後任には日本人を推薦したのですが、うまくいかなかったのが心残りです。

 以後、2008年の10th WEVAはロシアのモスクワ、2009年の11th WEVAはブラジルのサンパウロ、2011年の12th WEVAはインドのハイデラバードで開催され、参加して欲しいと要望されていましたので参加しましたが、いずれも大会としては成功しているようです。