馬科学情報

Q&A

PMC登録

 

QJESPMC登録について

 

 日本ウマ科学会は1990年にJJES(日本ウマ科学会雑誌)を発刊して以来、Current ContentsやPubMedに登録されるよう粘り強く働きかけを行ってきたと伺っております。今般JESのPMC登録が報告されましたが、PMC登録によってJESの何が変わるのか、今回はなぜPMCに登録されたのかなど、これまでの経緯も含めて教えてください。

 

A1:お答え(受稿日:2015.11.27)   安斎 了(元JSES副会長、JRA監事)

 

 自然科学の研究成果は、審査制度の確立された専門雑誌に論文として掲載されることではじめて公式に認められたことになり、またその論文が多数の研究者に読まれることではじめてその内容が広く知られるところとなります。JJES(現在はJES: Journal of Equine Science)は、発刊当初より“審査制度の確立された科学雑誌”ではありましたが、Current ContentsやPubMedといった、“世界共通の論文検索ツール”に掲載あるいはリンクされていなかったことから、論文が広く世界中の研究者の目にとまる機会が少ないという欠点がありました。特にインターネットが普及して以降、世界中の医学・獣医学分野の研究者はPubMedを論文検索の主要ツールとして使うようになり、“PubMedで検索できること”は研究者が論文投稿する雑誌を選択する際の重要条件のひとつがとなっていました。

 PubMedで検索できるか否かは研究あるいは論文そのものの良し悪しとは直接関係はありませんが、世界中で広く読まれることがなければ、結果的にその論文の価値が認められる機会も減ることになります。JESに投稿される論文はこうして徐々に減少し、掲載される論文の数も少なくなってきました。JES編集委員会もその現状にただ手をこまねいていたわけではなく、PubMedの検索対象となるために必要なMEDLINEへの収載の申し出を繰り返し行って来ました。しかしながら、世界中から申し出があるであろうMEDLINEへの収載条件は厳しく、掲載論文数の不足などいくつか理由により、実現できないままでした。

 そのような中、出版社からPMCという新しい米国のオンラインジャーナル公開サイトがあるとの情報がもたらされ、PMCに登載されるとPubMedの検索対象となることや、PMCへの登載条件はMEDLINE収載の条件よりハードルが低いこともわかりました。PMCに登載されるためには、これまでよりも若干の経費増及び追加作業が必要なものの、掲載論文の数などその時点のJESの状況でも許可される可能性があると判断できたため、常任理事会の承認を経て2012年から1年半をかけて必要な作業を進め、2014年にPMC側から登載が許可されました。その結果、現在ではJESに掲載された論文はすべてPubMedで検索できるようになり、さらにそこからPMCに跳んで、誰でも無料で論文全文をインターネット上で閲覧することが可能になっています。

 このことにより、JESに掲載された論文が世界各国の研究者の目に触れる機会は格段に増しています。例えば、JES掲載の論文が参考文献として他の論文に引用される数も多くなると期待されます。また国内では、PubMedで検索できないことを理由にJESに掲載された論文を学位(Ph.D.)取得のための基礎論文として認めない大学院もありましたが、これからはそのようなことはなくなります。さらに、そのようなことが複合的かつ相乗的な効果となり、今後はJESへ投稿される論文の数は増えまたその質も向上することが期待できますので、このことをきっかけにしてJESをわが国を代表する雑誌に育てることができればと思っています。会員の皆様には、このような趣旨を理解いただき、ご自身の論文の積極的なJESへの投稿はもとより、周囲あるいはネットワーク上の関連研究者に広く投稿を呼びかけていただけますようお願いします。