No.8 日本ウマ科学会創立10周年を祝して


日本ウマ科学会創立10周年を祝して(会長挨拶)

日本ウマ科学会会長 本好茂一

 日本ウマ科学会の誕生は1990年3月31日で,本年はまさに10周年の歳月を経て,ここに記念大会を迎えることになりました。わが国では,明治に入るや馬の改良増殖につとめることになり,西洋文化の取り込みの先端をきって,獣医学や畜産学教育が創設されました。馬は,交通や輸送のまた,農耕や生産物の運搬の手段として,一方戦争のための軍馬として,その改良増殖が広く行われてまいりました。それまでも有史以前から馬は最有用動物として活躍してきましたが,第2次世界大戦を境に先進諸国では,その活用は漸減の傾向にあります。現状では,競馬をはじめ,馬術や古来からの伝承されている各種行事などで継続的に利活用されております。1997年の統計でも,地球上には6,100万頭余が飼育されております。日本では1935年には軍用資源として,誇大な統計とも言われますが152万頭が存在していました。1998年にはわずかに11.1万頭へと激減しているのが現実であります。

 わが国の国土は狭く,農業構造の大変革にしたがって馬の利用頻度は極端に減少しております。このような風潮の中で,1987年,カナダのモントリオールで第23回世界獣医師大会(WVA)が開かれ,ここで世界ウマ獣医学会(WEVA)が旗揚げしました。会長はRobert A.Jack,事務局長にVemBL.Tharpが選ばれ,日本にもウマ獣医学会の結成を期待し,WEVAに参加してほしいとの要請が,JRA総研に届けられました。そこで1990年に日本ウマ科学会が発足,1991年,ブラジルのリオデジャネイロで第24回WVAでの第2回WEVAにおいて約6割強の獣医師が加入している学会があるがということで,加入することになったのであります。この間10年間の足跡の中で,創立以来,貢献して下さった会員の方や支援してくださった賛助会員の方々には心から感謝の意を込めて表彰することになりました。これからも,ずっとご支援をお願いいたします。

 これを機会に21世紀に向けて,日本ウマ科学会の進むべき方向を考えることとし,WEVA会長に就任されたばかりのワシントン州立大学獣医臨床科学部長のWarickBayly教授をお招きして記念講演を,また私が日本での馬科学の足跡の一部を紹介し,これからの馬科学のあり方についての私見を述べさせて頂くことになりました。

 会員の皆様の今後のますますのご研鐙とご発展を祈念して挨拶とさせて頂きます。


オーストリア温血馬

※このページで使用している写真は、(株)講談社発行の「世界家畜図鑑」から引用しています。