No.8 日本ウマ科学会創立10周年記念講演


21世紀のウマ科学

世界ウマ獣医学会会長 Warwic Bayly教授

Warwic Bayly

1952年生れ。1974年,オーストラリア・メルボルン大学獣医学部卒業。現在,米国ワシントン州立大学獣医学部長,世界ウマ獣医師全会長

 本日の講演では,主として臨床的な立場から将来の馬の研究について展望する。臨床的に有用な成果を得られるような研究が望ましい。従来からの観察に基づいた研究方法も重要であるが,最近のバイオテクノロジーの技術進展に伴って,馬の研究内容も大きく変わってきた。10-20年後には,馬の染色体の遺伝子配列は解明されており,疾病の原因,競走馬の走能力などの解明が期待される。したがって,今後20年間に馬の科学の先端を進むのは分子遺伝学的研究である。モノクロナール抗体や蛍光自動細胞分離分析法(FACs)の技術を利用することにより,細胞活動についてのわれわれの理解は大きく進歩してきた。この細胞の基本的な活動に関する知見の蓄積によって,炎症のような重要な過程が理解されるようになり,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)のような新しい技術による特殊な蛋白質の研究の導入により,馬の科学の領域にも新しい展開が開けるものと期待される。

 分子遺伝学,分子生物学または細胞生物学といった学問の進展により,生物学や,細胞受容器,炎症の媒介物質およびサイトカインと神経ペプチッドにより信号を伝達される細胞の機能についての研究が著しく前進した。とくに細胞受容器およびこれらの体液性媒介物質は,DNA塩基配列を伴う多くの研究の主題である。これらの研究は,炎症の発現や病気の進行の解明に貢献するものと考えられる。PCRやモノクロテール抗体を見るためのFACsのような技術の発展によって,DNA塩基配列,新しいペプチッドや蛋白質の研究が進展するであろう。私たちは常にこのような新しい技術に注目し,最善の方法を活用するように心掛けねばならない。

 今後の馬についての必要な研究課題は次の通りである。

@消化器疾患:疝痛が重要課題である。米国では,分娩後1ヵ月以内の母馬にしばしば発症する結腸捻転が問題になっている。罹患馬は,大量の穀物飼料を摂取しており乾草の摂取量が少ないので,穀物摂取の発酵により大量のガス発生をもたらす。その結果,腸管は健常馬に比べてより空虚になる。さらに,これらの馬は大量の乳汁を産生するので,軽度または無症状の低カルシウム皿状態を招き,それが胃腸管運動を減退させるものと考えられる。したがって,カルシウム減少,ガス産生の増大および結腸内の空虚化の複合異常が結腸を捻転し易くしており,疝痛の主原因であると考える。この考えは一つの仮説であり,今後の研究解明を期待したい。

 子馬の胃潰瘍についても最近重要視されている研究課題である。また子馬の感染性下痢症が問題になっている。ロタウイルスによる下痢症についてはかなり研究が進められてきたが,子馬がこのウイルスに感染する機序や発症の予防法については課題が残っている。最近は,クロストリジウムによる下痢症が子馬に多発している。子馬が下痢症で死亡する数も多く,経済的な損失を軽視できない。

 抗生物質の投与によって下痢を誘発することがあり,廉価でかつ馬の腸内細菌叢に悪影響の無い抗生物質の開発が求められている。従来から米国ではペニシリンが廉価であるために多用されてきたが,下痢を起こすことと,ペニシリン・メーカーの減少から入手しにくくなっていることが問題となっている。

A循環器疾患:競走馬にとって心臓機能はきわめて重要であり,この分野では,日本の研究者の業績を評価したい。馬の心臓および多くの心臓病については,さらなる研究が必要である。とくに,競走馬の突然死の原因究明は重要な課題である。若齢にもかかわらず心臓発作により急死するものがあり,また大動脈のような大血管の破裂により失血死するものもある。なぜこのような突然死が起こるのかの解明は,今後の大きな課題である。

 運動誘発不整脈も重要な研究課題である。この分野でも日本では多くの研究がなされてきたが,運動時に不整脈が出現する機序,さらにそれを防止する方法などの研究が期待される。さらに,心臓疾患は直接的に競走能力に悪影響を及ぼすので,安静時のみならず運動時の心機能の評価法について再検討する必要がある。心内膜炎や心膜炎のような重篤な疾患の早期発見や有効な治療法は緊急の課題である。とくに疣贅性の心内膜炎は重篤な疾患である。心内膜炎の診断には心エコー検査が有用である。心膜炎は診断が容易でないし,治療も困難である。

B免疫:馬の免疫については,ストレスと免疫機能の関連性の解明がきわめて重要である。とくに,馬の呼吸器疾患の解明には,免疫とストレスとの関係が重要な役割を果たしている。長い間,運動が呼吸器疾患の一つの誘因であると考えられてきたが,実際にはこの問題も解明されていない。

 近年,馬の航空機輸送が増加しているが,馬の免疫系に対する航空機輸送の影響について理解しておくべきである。基礎免疫反応を導く二つのリンパ球グループ,ヘルパーT細胞1型(TH1)とH型(TH2)の役割について充分理解しておくべきである。同じ刺激を馬に加えても,ある個体はTHIが反応するが,別の個体はTH2が反応する。この違いはいまだ明らかにされていない。TH2は主としてアレルギー疾患に反応するとされている。アレルギー疾患に対する免疫反応の実態が明らかになれば,馬の呼吸器疾患や皮膚疾患の治療に明るい展望が開ける。例えば,アレルギー疾患の一つである落葉状天疱瘡は,自己免疫疾患の一種であるが,きわめて難治性であり,競走能力にも重大な影響がある。

 さらに,運動免疫学と呼ばれる馬の呼吸器免疫系の研究も重要な課題である。運動免疫学は,主としてヒトで発達してきた学問領域であり,免疫系に対する外科手術または敗血症ショックの影響を解明するためのモデル研究として注目されている。20世紀に入り,研究論文も数多く報告されてきている。今世紀の前半の50年間に報告された論文数は30編程度であったが,1991年から1995年までの5年間に343編の論文が発表されている。今後,この課題はさらに重要視される。馬についても,長時間運動させると感染症に罹り易いことを経験的に知っており,運動免疫学は馬の臨床にも関連が深い。潜在的に軽度の基礎疾患がある馬に激運動を負荷して病態を憎悪させることがある。このような馬に対して,免疫反応を促進させるような薬物の開発が待たれている。また,馬における栄養と免疫との関係についても全く解明されていないので,今後の重要な研究課題である。

 ストレスに起因する馬の疾患として重要視されているのが胸膜肺炎である。本症は,輸送や運動に伴うストレスにより二次的に発症することが良く知られている。輸送が馬の免疫系に対する影響については,すでにJRA総研において多くの研究がなされている。本症は依然として予後が悪く,死亡率が高いので,効果的な治療法や予後改善についての研究が求められている。

C呼吸器疾患:内視鏡の導入により,上気道の咽頭や口蓋の病態がクローズアップされている。競走馬においては,これらの病態が競走能力にどの程度影響しているかが重要であるが,いまだ明らかにされていない。口蓋咽頭弓の吻側変位,破裂軟骨炎および喉頭蓋エントラップメントはすべて病的なものと考えられてきた。これらの状態が競走馬の能力減退の原因になるのかはいずれ明らかにされるであろう。これらの馬に対しては主として外科的療法が行なわれているが,外科手術自体が侵襲的であり,しかもトレーニングを長期間休止することになり,競走能力に対する影響は大きいものと考えられる。これら上気道疾患に対しては,侵襲の少ない治療法を検討すべきであり,それによって,これらの疾患が本当に能力減退の原因であるかどうかが明らかになる。

 喉嚢も研究者が手をつけていない問題である。馬にはなぜ喉嚢があるのか,私たちはいまだに充分には理解していない。したがって,喉嚢の生理的な役割から研究する必要がある。連鎖球菌や真菌に起因する慢性喉嚢炎は治療が困難であり,一層の研究が望まれる。喉嚢には,外頚動脈,内頚動脈,第9,10および12脳神経のような生命維持に重要な血管や神経に隣接しており,外科療法により重篤な感染症を続発する危険性があり,治療法の改善が必要である。

 その他の呼吸疾患として,運動性肺出血(EIPH)については,かなりの研究が進められてきた。世界中でEIPHの発症が知られてきており,原因についても多くの研究成果が発表されてきているが,実際の競走能力との関連性については不明である。肺出血の程度についても,いくつかの出血斑が見られる軽度のものから,鼻出血にいたる重度のものまで様々であるが,治療方針はあまり変わらないのが実状である。運動能力に影響するEIPHはどのような条件をもっているのか,運動能力に影響しないEIPHはどのような条件をもっているのかを明らかにするべきである。運動能力との関連では,出血量や出血時期を特定するような研究が必要である。さらに,出血の部位や繰り返し発症する場合の原因,そして併発する小さな気道の炎症がEIPH発症馬の能力減退の主原因ではないのかといった疑問を解明すべきである。

 ワクチン接種についても研究すべき課題が残されている。長い間,注射によりワクチンが接種されてきたが,必ずしも期待されるような予防効果は得られていない。より特異的かつ有効なワクチンを開発する必要がある。最大限の免疫反応が得られるような接種方法についても検討するべきである。従来のワクチンは,感染を起こした微生物全体を使って作られてきた。しかし,感染の成立に関与しているのは微生物の1部分であり,通常は気道の標的細胞にウイルスまたは細菌が付着できる抗原といわれる蛋白質である。したがって,感染性抗体に対するワクチンの開発が必要である。従来のワクチン接種において,しばしば防御がブレークダウンすることがあり,効果的なワクチン・スケジュールについても検討するべきであり,子馬用と成馬用の両方の接種スケジュールが求められている。

 さらに,研究するべき呼吸器の分野として,気道粘膜の問題がある。気道は,狭窄により閉塞することがあり,粘膜の分泌物により重度の呼吸困難を引き起こすことがある。しかし,馬の気道粘膜の分泌物については,ほとんど研究されていない。気道の分泌物の組成が呼吸器病によってどのように異なっているのか,さらに,去痰機能を促進する有効な薬剤についても,私たちはほとんど知らない。これらも,今後の重要な研究課題である。

 呼吸器病の治療は,馬の獣医臨床においてきわめて重要であり,その治療薬はほとんどの製薬会社にとっても大きな市場である。馬の獣医師は,呼吸器病に対する特殊な薬剤の有効性について熟知していない。私も,馬に有効であり正式に認可された鎮咳剤はないと思う。馬の去痰剤としては,気道粘膜を清浄にするために水溶性薬剤が望ましい。薬剤ならびにワクチンともにエアロソール療法の検討が必要である。

 子馬は呼吸器病にかかり易い。ウイルスおよび細菌による呼吸器病について多くに研究がなされてきた。とくに,ロドコッカス感染症については,日本の研究者の業績が注目されている。さらに,ロドコッカスや,腺疫のような重篤な細菌性疾患に対するワクチンの開発の研究が期待されている。

D繁殖関係:繁殖は,馬産業にとってきわめて重要な問題である。ここでは,今後5年以内に解決を望まれている2つの課題について述べる。1つは,妊娠後期の胎盤炎である。本症は妊娠後期に流産を起こすことがあり,分娩しても子馬は虚弱でありかつ欠損があり,時には死産となる。もう1つは,若い種雄馬の不妊症である。競走馬の現役時代に種々のホルモン剤を投与された影響であるとの説もあるが,十分には解明されていない。何百万ドルも払ってシンジケートを組んで購買し,繁殖に供する段階で不妊症であることがわかり大問題となる。

 馬の新生子学領域の研究は著しく進歩してきた。未熟子馬でも生存率は改善されてきたので,低酸素症に関連する中枢神経系の異常またはその他の行動異常を発現する頻度が増加してきた。この早産に伴う中枢神経障害の問題は,今後の研究課題である。

E画像診断:馬の筋骨格系の損傷には,画像診断が有用である。過去15年間に,画像技術は大きく進歩し,さらに種々の技術が開発されているので,いろいろな分野に応用されている。磁気共鳴画像(MRI)や自動断層撮影が,馬の画像診断に導入されてきた。私どもの大学では,子馬の痙撃発作,外傷などの診断にMRIを応用して,臨床的に有用な情報を得ている。

F神経疾患:米国でもっとも一般的な馬の神経疾患として,馬原虫性脊髄脳炎(EPM)が知られている。EPMは日本でも発生が報告されているが,その診断,治療,予防に関してまとまった見解は知られていない。さらに研究すべき神経疾患の課題として,頚椎奇形である馬運動失調症候群(Wobblersyndrome)がある。本症の発症は,数百年前から知られてはいるが,発病に対する栄養の関わりについての研究が必要である。

G筋骨格疾患:馬の獣医師にとってもっとも重要な疾患は筋骨格疾患である。前述したように,最近の画像診断技術の進歩により,馬の跛行やその他の筋骨格疾患の早期発見ならびにより詳細な異常の検出が可能になった。成馬の下肢に対するMRIの導入や自動断層撮影の利用によって,X線検査では検出できないような変化を見ることができるようになった。シンチグラフィーも筋骨格疾患の診断法として活用されてきており,とくに無麻酔で検査できることと,成馬の脊柱,骨盤,膝関節のような領域で鮮明な画像が得られることが大きな利点である。

 馬の臨床的課題のなかでもっとも重要なのは破竹である。跛行の発症機序や予防法を検討するには,まず正常な歩行ならびに四肢の筋肉とその他の部分の統合された動きについての十分な理解が必要である。さらに,膝関節の鮮明な画像,ならびにすべての靭帯構造の起始部または付着部を詳細に検査する方法も確立するべきである。ここでいうすべての靭帯構造とは,繋靭帯ならびに浅屈筋支持靭帯と深屈筋支持靭帯のようなその他の小さな構造,および関節包の周りの靭帯を意味する。とくに,高位繋靭帯炎は解決困難なものであり,一層の研究が望まれる。

 若馬の骨深部の限局性脆弱化も重要な課題であり,高速の運動負荷が関与する損傷であると考えられる。最近,本症に関する論文が報告されたが,多くの若馬にみられる跛行の原因を解明するためには,骨の発育に対するトレーニングの影響についての研究の進展が望まれる。さらに,トレーニングと滑液との関係も解明されていない課題である。トレーニングしていない若馬の滑液成分については多くの報告があるが,高速運動によるトレーニングにより滑液成分がどのように変化するかは解明されていない。変性性関節炎も未解決の課題である。本症は,すべての年齢の馬が罹患するがとくに老齢馬に多く,競走馬に限らずすべての競技馬が罹患する。離断性骨軟骨炎(OCD)は,急成長する若い競走馬に発症するものでよく知られた病気である。その原因や治療法についてはかなり研究されてきたが,とくに,栄養との関係,飼養管理方法,遺伝との関係などについては明らかでないので,今後の研究が必要である。とくに競走馬のトレーニングにおいては,トレーニングに対する馬体の反応を監視する方法,とくに骨障害を早期に発見する方法を検討するべきである。疲労骨折の進行と,トレーニングによる骨の適応との間のバランスが重要な研究課題である。さらに,骨生成と骨吸収を起こす基礎的因子についても解明が待たれる。トレーナーやオーナーが,種々の病気からリハビリテーションしている馬をどのように監視すればよいのか,またより科学的に考案された運動処方も必要である。腱に対するトレーニング効果に関しては不明な点が多い。骨に対するトレーニング効果についてはいくつかの報告があるが,腱に対してはトレーニングにより変化するであろうと推察しているにすぎない。馬の運動またはトレーニングと,腱の強さと構造の変化との関係を綿密に研究した報告は見当たらない。骨の強度やその他の筋骨格系の構造を改善するための遺伝子治療により,変性性関節炎の治療が可能であろうか?これは将来の重要な研究課題である。コセクインおよびその他の型のプロテオグリカンに類似する薬物の開発も将来の研究課題であり,これらの薬剤を注射または経口投与のいずれの投与方法がよいのかも知る必要がある。

 筋骨格疾患を考える際に,装蹄を無視することはできない。適正な装蹄により,筋骨格疾患を予防することができる。筋骨格疾患の予防のため,日本では馬場走路面を監視しかつ管理するための卓越した研究が進められているが,この研究はさらに進められるべきである。骨の深部損傷についてすでに述べたが,とくにこの損傷が繰り返し起こることが問題である。これは,若馬の軟骨下骨に対する度重なる高速のレースまたはトレーニングの影響によるものと考えられる。変性性関節炎の治療については,多くの研究が報告されているが,健常な軟骨を用いて,罹患した関節面を再装着する方法が開発されている。この関節面の再装着は,細胞培養により得られた健常な軟骨を罹患した関節面に移植する外科的手法である。細胞培養で軟骨組織を成長させる技術に加えて,軟骨片を畳表面にいかにして定着させるか,そして移植片をいかにして正常に成長させて治癒させるかという問題がある。これらの課題は,一朝一夕に解決はできないが,変性性関節炎に罹患している馬が大変多いので,たとえ時間がかかっても解決すべきである。

 競走事故傷害や崩壊骨折のような大きな外傷では,続発する骨や腱に対する二次感染が予後を著しく憎悪させる。したがって,抗生物質を直ちに患部に吸収させるように,損傷部に注入するかあるいは損傷部に特異的に吸収させるような方法を検討するべきである。蹄葉炎は,依然として馬にとって重要な研究課題である。その発症機序,治療法および予防法についての研究が待たれている。筋骨格疾患や大きな外傷の再建手術には,安全なインプラントやねじ類の開発が必要である。損傷部位にかかる重量を分散することが必要であり,そのためにギプスの装着方法や強固なギプス材料の開発が必要である。馬の研究だけの問題ではないが,研究予算が十分でないと研究は進まない。馬のオーナー,トレーナー,一般の人たちに,研究費支援の教育や啓蒙活動が必要である。馬の研究にどの程度の経費がかかるかということを十分に理解してもらう必要がある。

 最後は,タイイングアップ症候群すなわち運動性横紋筋融解症について述べる。横紋筋融解症と筋損傷とは類似しているが,病気の進行に伴う症状にいくつかの相違があるようである。筋損傷の進行に対する飼料と栄養の影響,筋損傷の遺伝的関係,飼養管理や予防法についての研究が進められるべきである。

 最後に,馬の研究者や開業獣医師の活動を助けるための道具や装置の改善・開発の研究の必要性について述べる。これは,馬産業の発展にもつながることである。馬の研究には,研究室よりも競馬場や牧場のような野外で検査をすることが多く,携帯型の機器の開発が非常に重要である。たとえば,野外で直ちに検査結果が得られる携帯型の画像診断装置や血液分析装置は,病気の早期発見にも大きく貢献するものである。

 最後に,馬の研究にあたっては,意味のある解決が得られるような仮説の慎重な構築が常に大切であることを強調したい。"なぜこの研究をしているのか?""臨床に役立つことは何か?"といった疑問を常に自問自答するべきである。そしてバイオテクノロジーのような新しい技術は積極的に取り入れることにより,研究の未来は大きく広がるものと考える。馬の研究者の集団は必ずしも大きいものではないが,国際的な共同体が築かれており,お互いに意見交換ができることが将来の研究発展のために重要なことである。

(文責天田明男)

ドン

※このページで使用している写真は、(株)講談社発行の「世界家畜図鑑」から引用しています。