7.結び
現在,日本では馬を畜産学や獣医学としての対象と考えるのは相当困難な状況である。目を海外に向けて見ると,世界馬獣医学会(WEVA)や英国馬獣医学会(BEVA)に参加して感ずるのは,学会場ではいつも数百人の老若男女の先生方があらゆる分野で楽しく語り合っていることである。日本では,日本ウマ科学会が唯一の馬を語る場であり,相互に自由に理解しあう時間であるが,やや小人数に止まっている。
日本人が熱し易く冷め易い性格であることは充分察しているが,明治以来の流行や衰退の速度はかなり早い。21世紀に再びウマ科学が必要となったら,全世界から有用な情報や有用な人材をいっきに集めて対応することになるのであろう。この間の繋ぎ役に徹するには本当に不動の決心をもって当た
らなくてはならないと考える。あらゆる機会をとらえて,あらゆる分野に手の届く限り,積極的に前向きに発言し,行動して行くべきであろう。
参考文献
1.篠永紫門(1972):日本獣医学教育史.文永堂,東京.
2.白井恒三郎(1979):日本獣医学史(復刻版).文永堂,東京.
3.武市銀次郎(1999):富国強馬一ウマからみた近代日本史.講談社,東京.
4.農林水産省畜産局家畜生産課(1999):馬関係資料.農林水産省,東京.
5.農林水産省(19%):家畜改良増殖目標.'農林水産省,東京.
6.H.デンベック(小西正春,渡辺清訳)(1979):家畜のきた道一動物の分化史A.築地書館,東京.
7.ヒトと動物の関係学会(1999):人と家畜のかかわりの理念に関する検討会報告書.ヒトと動物の関係学会,東京.
8.野澤謙・西田隆雄(1981):家畜と人間.出光書店,東京.
9.LRobinsB(編)(山崎恵子訳):人間と動物の関係学.インターズー,東京.
10.吉永みち子(1990):もっと馬を!平凡社,東京.
11.澤崎坦(2000):馬産を支える日本在来馬.HippophileNo.6,39-57.
|