2.近代における馬の役割
家畜化された馬は最初は食肉用として飼育されていた。その後,馬は生物兵器として利用されることになる。すなわち,馬が戦車を牽き,人がその上に乗って戦争をするという用途に使われるようになった。当時の戦争における馬の役割は大きく,戦争そのものの帰趨を支配する存在であった。馬が生物兵器として利用された期間はずいぶん長く,その間にも兵器としての価値を高めるために育種改良されてきた。それが一国の政策となり,富国強兵のシンボルともなった。
近代戦争における出征人馬比較を表1に示した。近代戦争における出征馬数/百人比をみると,1866年の普墺戦争では16,1870年の普仏戦争では17であったが,1904年の日露戦争では20になり,第1次世界大戦では33に増大した。第一次世界大戦までは馬は戦争に不可欠の重要な兵器であり,各国とも馬匹の質的向上はもとより量的確保のために苦慮していた。第2次世界大戦以降は,急激なモータリゼーションにより,馬の社会的需要は衰退の一途をたどり,馬の飼養頭数も激減した。
表1.近代戦争出征人馬比較 (単位:万人,万頭)
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戦争名
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年次
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国 名
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人 員
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馬 数
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馬数/100人
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普墺戦争
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1866
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プロセイン
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66.1
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]
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12.7
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]
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19
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平均
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イタリア
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33.5
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160.2
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3.9
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25.2
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12
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16
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オーストリア
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60.6
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8.6
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14
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普仏戦争
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1870-71
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プロセイン
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118.3
|
]
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316.3
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20.0
|
]
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55.0
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17
|
17
|
フランス
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198.0
|
35.0
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18
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日清戦争
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1894-95
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日本
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24.0
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]
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59.0
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5.8
|
]
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13.1
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24
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22
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清国
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35.0
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7.3
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21
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日露戦争
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1904-05
|
日本
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100.9
|
]
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229.9
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17.2
|
]
|
47.1
|
17
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20
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ロシア
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129.0
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29.9
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23
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第一次
世界大戦
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1914-18
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連合国側
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1059.0
|
]
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1774.0
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365.5
|
]
|
590.7
|
35
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33
|
同盟国側
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715.0
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225.2
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31
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武市銀次郎(1999)より引用
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