馬科学情報

Q&A

馬臨床獣医師ワーキンググループの設立経緯

 

Q:馬臨床獣医師ワーキンググループの設立経緯と活動概要について

 

 2009年に馬臨床獣医師ワーキンググループが発足し、その後馬臨床獣医師の知識及び技術の向上のために活動されていますが、その設立理由及び経緯について教えてください。また、これまでの活動概要並びに2013年に発展的に解散し、臨床委員会が新設された理由についても併せて教えてください。

 

A1:お答え(受稿日:2015.12.3)   青木 修(JSES会長)

 

 国内の多くの獣医系大学での馬に関する臨床教育は、他の家畜に比べて十分とは言えない現状を踏まえ、馬の臨床獣医師を育てる教育プログラムを立ち上げる動きが軽種馬業界の一部で台頭し、現在、複数のプログラムがそれぞれ別個の主催者により独自に実施されています。このような情勢を背景に、帯広畜産大学の佐々木直樹先生から、新たな企画として、海外の著名な臨床獣医学の専門家を招聘して国内獣医師との症例検討会と実習(Wet Lab)を主体の勉強会を定期的に開催したいとの提案がありました。これを受けて、日本ウマ科学会学術集会に併せて、この企画を実行するための方策を模索した結果、とりあえず2009年、有志による「馬臨床獣医師ワーキンググループ(WG)」を設置して、主催権を日本ウマ科学会から切り離し、独立採算方式での外国人専門家招聘事業が起ちあがりました。この時点でのWGメンバーは、世話人3名の他、馬臨床獣医師15名程度で構成されていました。

 このWGによる事業は、メンバーのボランティア的な協力と関連業者の商品展示会を主たる原動力として運営されることになり、それ以降毎年、学術集会での症例検討会と、それに前後する日程で生産地とJRAトレセン診療所の2会場での獣医臨床技術の実習を組み合わせた勉強会を開催し、実習については、その都度、実習の様子を記録したDVDを制作し、公的機関には無償また個人希望者には有償で配布し、着実に馬臨床技術の向上に貢献しているところです。

 この事業の安定的な運営が定着しつつあることから、その成果のさらなる拡大を図るべく、2013年からはWGを発展的に解消し、日本ウマ科学会の常置委員会として、その事業を引き継ぐ臨床委員会を新たに設置し、馬臨床の勉強会を安定的に継続することになったのです。

 

■これまでの外国人専門家招聘リスト■

 2009年 Prof. Dennis E. Brooks  ウマの眼科
 2010年 Prof. Dean Richardson  ウマの整形外科
 2011年 Dr. Michelle M LeBlanc  ウマの繁殖
 2012年 Dr. Sue Dyson  ウマの画像診断
 2013年 Prof. Nathaniel A. White  ウマの開腹手術
 2014年 Dr. Scott Morrison  ウマの最新装蹄療法
 2015年  Dr. Mama & Dr. Steffey  ウマの麻酔技術 (学術集会とは別に9月開催。
  学術集会では国内専門家によるシンポジウム“ウマ獣医療における抗菌薬療法”を開催。)