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高井教授(北里大)が馬ロドコッカス感染症の研究で日本農学賞を受賞

高井教授(北里大)が馬ロドコッカス感染症の研究で日本農学賞を受賞

 第87回日本農学大会が平成28年4月5日(火)に東京大学山上会館で開催され、平成28年度日本農学賞が農学分野で顕著な業績を挙げた7名の研究者に授与されました。ウマの分野では、北里大学獣医学部教授の高井伸二博士が「馬の生産地疾病ロドコッカス・エクイ感染症の制御に関する研究」で受賞されました。ウマの研究分野で日本農学賞を受賞するのは歴代5人目で、昭和23年に北海道大学教授の平戸勝七博士が「馬の伝染性流産並びに仔馬病に関する研究」で受賞されて以来となります。今回の受賞は、高井先生を中心とする北里大学獣医学部獣医衛生学研究室グループがこれまでに発表した多くの調査・試験研究論文及び普及成果が評価されたものです。
 ロドコッカス・エクイは1~3か月齢の子馬における化膿性肺炎の起因菌で、わが国の馬生産地では古くから子馬病や幼駒肺炎の主要原因菌の一つとして恐れられてきました。高井先生を中心とする研究グループは1)本菌感染症の血清学的検査法の確立と疫学調査の実施、2)病原性プラスミドの発見及び強毒株の病原性の解析、3)病原性プラスミドの分子遺伝学的研究、4)強毒株の分子生物学的研究などの研究活動を通して、競走馬の生産地である北海道日高・胆振地方の家畜保健衛生所や各種獣医団体、JRA競走馬総合研究所などと一緒に調査試験研究を行うと共に、得られた研究成果を早期に臨床現場へフィードバックするため、野外応用試験や臨床応用試験を積極的に行ってきました。その結果、日高・胆振地方の馬生産地では、本菌感染症の子馬の抗体価測定が常時実施できる体制が整い、感染を疑う子馬に対する経鼻カテーテルによる気管洗浄液の採取と細菌学的検査が本菌感染症の確定診断として定着しました。現在では、JRAの生産地疾病等調査が開始された頃に比べ、臨床獣医師の本菌感染症に関する知識や診断技術が向上し、早期診断及び早期治療が可能となり、重症・死亡例が顕著に減少しております。  以上、高井先生の日本農学賞受賞に関する情報を提供させていただきましたが、更に詳しく知りたいという方のために受賞講演要旨を以下に掲載します。会員の皆様には是非一読していただきますようお願い致します。

馬の生産地疾病ロドコッカス・エクイ感染症の制御に関する研究

(JSES事務局:鎌田正信、2016.5.18)