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JVMA年次大会本学会特別企画シンポジウム:開催概要

JVMA年次大会本学会特別企画シンポジウム:開催概要

 

 平成28年2月26日~28日に秋田市で平成27年度日本獣医師会(JVMA)獣医学術学会年次大会が開催され、1日目に日本ウマ科学会と日本産業動物獣医学会合同の特別企画シンポジウムが行われました。この本学会特別企画シンポジウムの開催概要について、パネリストの一人であるJRA総研丹羽秀和氏に依頼し情報提供していただきましたので以下に紹介します。

 今回の本学会特別企画シンポジウムは、「馬感染症の診断・治療及び予防の最新事情」というタイトルで実施され、馬の臨床や防疫に精通する4名のパネリストが講演を行いました。鹿児島大学の三角一浩教授と帆保誠治教授が座長を務められ、お二人ともパネリストとしても講演されました。最初に三角先生が「馬感染症のオーバービュー」というタイトルで講演され、馬産業の産業構造を始め、国内で発生する様々な感染症の概要について説明されました。馬医療及び防疫業務等に携わっていない参加者にも理解しやすいよう、ご自分の経験を随所に盛り込んだ分かり易い内容となっていました。次いで、JRA競走馬総合研究所の山中隆史先生が「馬の監視伝染病―ウイルス性疾患」というタイトルで、丹羽秀和先生が「馬の監視伝染病―細菌性疾患」というタイトルでそれぞれ講演されました。山中先生の講演は、ウイルス性監視伝染病の中でも特に国内への侵入が危惧される馬インフルエンザ、水胞性口炎、アフリカ馬疫などに重きを置いた内容で、海外での最近の発生状況を含めた馬防疫対策上重要な種々の最新情報の提供がありました。丹羽先生の講演は、細菌性監視伝染病の中でも長年わが国の生産地やJRAが中心となって防疫対策が行われてきた馬伝染性子宮炎や馬パラチフスに関する内容が主体となっていましたが、オリンピックを控えてその発生の動向が注目されている鼻疽に関する様々な情報提供もありました。最後に帆保先生が「馬の一般的な感染症」というタイトルで講演されました。帆保先生の講演は、日常的に遭遇する様々な感染症(肺炎やフレグモーネ)の診断や治療に関する話題を取り上げたもので、臨床獣医師にとっては直ぐにでも役に立つ内容となっていました。
 今回のシンポジウムは秋田アトリオン3階の第2会場で13時~15時30分にかけて開催されましたが、馬関係者のみならず、微生物関係の研究者、国や地方自治体の防疫担当者など多くの方々が聴講に訪れ、質疑応答も含めて盛況のうちに終了いたしました。馬の監視伝染病は世界各国の様々な地域で常に発生しており、2007年に発生した馬インフルエンザの流行のように日常を一変させるような状況がいつ起こるかもしれません。国内の各種馬群における健康及び衛生管理を徹底してその正常性を維持するとともに、万が一の時に有効な対策を早期に実施できるようにするためにも、このようなシンポジウムを定期的に企画し馬感染症の最新の知識や技術の普及に努めることは重要であり、今後も継続していく必要があると考えられます。

 

(JSES事務局:丹羽秀和氏情報提供、2016.5.20)