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東京農工大学名誉教授の田谷一善先生が日本獣医学会越智賞を受賞

東京農工大学名誉教授の田谷一善先生が日本獣医学会越智賞を受賞

 

 第159回日本獣医学会学術集会が平成28年9月6日から8日にかけて日本大学湘南キャンパスで開催され、平成28年度日本獣医学会越智賞が選出されました。本年度の越智賞は,馬の繁殖に関する研究とともに,「哺乳類の生殖内分泌学に関する研究」で顕著な業績を挙げられた,東京農工大学名誉教授の田谷一善先生に授与され、9月7日に授賞式及び受賞講演が執り行われました。越智賞は、獣医学の学術研究あるいは教育の振興に顕著な功績をおさめた会員に対し授与されるたいへん栄誉のある賞であり,田谷先生が歴代27人目となります。

 馬の繁殖機能は,他の哺乳動物とは大きく異なる点が多く,発情や妊娠に関する生殖関連の情報が少ないことで知られています。田谷先生を中心とする研究グループは,これまで哺乳動物に関する生殖内分泌学的研究を長年に渡り実施し,1)泌乳動物の卵巣機能抑制機構とストレスによる性腺機能抑制機構に関する研究、2)性腺ホルモン「インヒビン」による哺乳類の排卵数調節機構に関する研究の他に,3)馬における排卵数調節因子の解明に関する研究,4)馬の排卵時に認められる特異的なホルモン動態に関する研究など,馬の生殖内分泌に関する研究活動を通して、競走馬の生産地である北海道日高・胆振地方の各種獣医団体、JRA日高育成牧場,JRA競走馬総合研究所などと一緒に調査試験研究を行ってきました。また,血液中に微量に存在する各種血中ホルモンの濃度測定を基軸として,馬の生産,育成に認められる現象を,内分泌学の研究を基軸に証明してきました。

 その結果、日高・胆振地方の馬生産地では、これまで経験則に基づいて実施されてきた診断や治療において,ホルモン測定による根拠ある診断や治療を進める基盤を作出するとともに,とくに馬の生産産業に直結する問題となっている,交配時の発情兆候微弱や馬の生産において避けなければならない双胎妊娠に関連する卵胞発育数の過不足について,これまで重要視されていた「エストロジェン」ではなく「インヒビン」というホルモンが極めて重要な調節因子であることを証明しました。

 これらの研究成果は,各種講演会や学会発表を通じて発表されるとともに,国際的に評価の高い数多くの論文に多数投稿・掲載され,馬の生産獣医療の分野で大きな役割を果たしました。田谷先生は,大学を定年退職後においても,日本ウマ科学会副会長およびJournal of Equine Science誌の編集長の職務を継続され,現在においても精力的にわが国のウマ科学の発展に寄与されており,その功績は誠に大なるものと解されます。

 以上、田谷先生の日本獣医学会越智賞受賞に関する情報を提供させていただきましたが、更に詳しく知りたいという方のために受賞講演要旨を以下に掲載します。会員の皆様には是非一読していただきますようお願い致します。

 

    

哺乳類の生殖内分泌学に関する研究

 

             (帯広畜産大学教授 南保泰雄、2016.9.12)