ウマ科学情報
JVMA平成28年年次大会(石川)本学会特別企画シンポジウムの講演内容
- 雄馬と雄牛の生殖器の解剖学的および生理的相違
- 雄馬と雄牛の繁殖利用方法の相違
- 交配活動に影響する雄馬と雄牛の疾患
- 競走馬における人工授精技術の将来
JVMA平成28年度年次大会(石川)における本学会特別企画シンポジウムの講演内容
“タイトルは他の動物種との類似点・相違点から見た馬の繁殖、獣医師向けに講演”
平成29年2月24日(金)から26日(日)までの3日間にわたって石川県金沢市で日本獣医師会(JVMA)平成28年度獣医学術学会年次大会が開催されますが、日本ウマ科学会は共催講演として馬の繁殖に関するシンポジウムを26日午前中に第4会場で実施します。先般講演者の一人であるイノウエ・ホース・クリニックの井上裕士氏より講演内容について情報提供がありましたので以下に紹介します。
わが国は欧米諸国に比べて馬専門の獣医師の数は少なく、またその職場も北海道の馬生産地や競馬関連施設に偏在しています。しかし、最近では競走馬の数が減少する中でも乗馬或はホースセラピーのような馬を用いた活動は各地で増加傾向にあり、さらには3年後の平成32年に開催される東京オリンピック・パラオリンピックを控えていることから、馬の獣医師に対する国民の期待は今後ますます高まるものと思われます。そのような中、国内各地に点在している馬の獣医療を専門とはしないが、馬の臨床や防疫に携わる機会のある獣医師が、馬獣医学の基本或は最新の情報や技術を学ぶ機会を設けることは、わが国全体の馬の獣医師のレベル維持とその向上にとって大変重要と考えられます。そこで、馬獣医学の専門家集団である日本ウマ科学会が日本獣医師会に協力する形で、産業動物獣医学会の中に馬に関するシンポジウムを企画しました。
3回目となる今回のシンポジウムは鹿児島大学の三角一浩教授に企画並びに座長を依頼し、「他の動物種との類似点・相違点から見た馬の繁殖」というタイトルで、3人のパネリストに講演をお願いしました。井上裕士先生には「日本におけるサラブレッド生産のオーバービュー」、帯広畜産大学の南保泰雄先生には「雌馬の生殖器機能と疾患」、鹿児島大学の鼻添孝先生には「雄馬の生殖機能と疾患」についてそれぞれ講演していただく予定です。馬の繁殖分野における最新の技術や情報の他、現場での知恵やコツなど、様々な情報が得られる貴重な機会ですので、本学会会員の皆様には是非参加していただきますようお願い申し上げます。また、2月24日(金)には第6会場で13:00~16:00まで、市民公開講座「人と馬の福祉を考える」も催されますので、併せて此方の方にも参加していただきたいと思います。なお、井上裕士先生から提供された3名のパネリストの講演要旨概要と開催日程を以下に記載します。
1)日本におけるサラブレッド生産のオーバービュー(イノウエ・ホース・クリニック 井上 裕士)
日本におけるサラブレッド種の生産頭数は、バブル経済が破綻した1990年代前半以降減少傾向にあるが、その市場価格は必ずしも低下しているわけではない。また、近年海外のオーナーが日本国内で繁殖牝馬を所有するケースが散見されることから、日本でサラブレッド生産に携わる獣医師には、その生産性を高めるため国際レベルでの技術的な研鑽が常々求められている。今回はサラブレッド種の繁殖面での特性を説明したうえで、生産に携わっている日高地方の臨床獣医師の繁殖牝馬と種牡馬それぞれに対する日常的な業務を概説する。
2)雌馬の生殖機能と疾患 -牛との相違-(帯広畜産大学 南保 泰雄)
日本における馬の生産率向上および利活用の展望として、馬を専門としない獣医師が馬の生産獣医療に参画し、協力できるような体制づくりが必要と考えられる。本講演では、軽種馬や重輓馬の繁殖に携わっている演者より、馬と牛の違い、馬の繁殖生理、馬の生殖器解剖、安全な馬の繁殖検査、不受胎の要因、などについて紹介し、安全かつ簡単な方法で馬生産獣医療を実施するための基本情報を提供したい。
3)雄馬の生殖機能と疾患 -繁殖技術における相違-(鹿児島大学 畠添 孝)
馬の主な用途は、乗用馬、競走馬、輓馬(農用馬)等である。乗用馬と農用馬については自然交配と人工授精が行われているが、競走馬については人工授精が認められていない。このため、馬では人工授精技術が牛ほどは普及していない。牛も馬も草食動物であるが、その解剖的構造等にはかなりの相違がある。ここでは雄畜として以下の相違について考えてみる。
【平成28年度獣医学術学会年次大会(石川)】
日時:平成29年2月26日 9:00~12:00
場所:ホテル金沢 4F 第4会場(エメラルドB)
演題:他の動物種との類似点・相違点から見た馬の繁殖
(JSES事務局:井上裕士氏情報提供、2016.12.2)